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1.1.1. リモートセンシング

降水・積雪・土壌水分といった水文情報は水循環を理解する上で不可欠な要素である。 そして、それらの面的な広がりを把握するために人工衛星によるリモートセンシングが非常に有効な手段となってくる。 本研究室では衛星搭載マイクロ波放射計によって得られる電磁波情報を元に各種水文情報の算定を行うアルゴリズムの構築を進めている。

研究の方法としては、現地観測(図1-1,1-2)によって各水文量とその状況における電磁波を測定しそれらの間における物理法則を解き明かし、そこから作成したアルゴリズムを人工衛星に搭載されたセンサーよって観測した電磁波に適用することによって全球的な水文量算定を行っている。

図1-1
図1-1) 土壌水分算定アルゴリズム構築のために行われた千葉実験場でのマイクロ波放射計による観測
図1-2
図1-2) 土壌水分計の設置
図1-3
図1-3) 降水量算定アルゴリズム構築のためのデータ取得に用いられたNASDA降雨レーダ(若狭湾にて)
図1-4
図1-4) 積雪深算定アルゴリズム検証のための設置された積雪深計(シベリア・ヤクーツク)
図1-5
図1-5) 観測結果から構築したアルゴリズムによって求めた全球土壌水分分布(2000年6月)
図1-6
図1-6) 観測結果から構築したアルゴリズムによって求めた全球積雪深分布(1998年1月)

4次元データ同化

人工衛星によるリモートセンシングは水文量の面的な広がりを測定できる点で非常に有効な観測手法である。 しかし人工衛星は常にひとつの領域を観測しつづけてないため時間的に不連続なデータしか得ることが出来ない。 そこで面的な広がりと時間的連続性の両者をもったデータを作成することを目的としたのが4次元データ同化(4 Dimentional Data Assimilation)と呼ばれる手法である。 本研究室では、人工衛星による水文量算定アルゴリズムの構築だけでなく、それらと合わせて時間的に連続したデータを作成するための4DDA手法の開発にも取り組んでいる。 これは、現地観測地点のある付近の衛星データを初期値として物理モデルによって時空間的に連続したデータを作り、次回の衛星観測データと比較するということを繰り返して、良質のデータを得ようとするものである。 こうして作成された良質の時空間的データは日々の気象予報の精度向上に資するものとして期待されている。

図1-7
図1-7) モデルによって算定されたデータ(左)と人工衛星による実際の観測(右)との比較
図1-8
図1-8) 観測値と従来の数値モデルの結果と本研究室で構築した4DDAの結果の比較。4DDA(緑線)と観測値(太線)との時間変化の対応が良いことが分かる。